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パトリツィア・カヴァッリ詩選集

Patrizia Cavalli. Poesie scelte

パトリツィア・カヴァッリ

Patrizia Cavalli
パトリツィア・カヴァッリ

イタリアの詩人、作家。1947年、ウンブリア州トーディ生まれ。1968年にローマに移り住む。学生時代にエルサ・モランテと出会い、彼女に詩の才能を見出された。その結果、1974年に最初の詩集Le mie poesie non cambieranno il mondo(私の詩は世界を変えない)が発表された。1976年にはビアンカマリア・フラボッタが編纂した、戦後から現代までのイタリアの女性詩人を集めたアンソロジーDonne in poesia – Antologia della poesia femminile in Italia dal dopoguerra ad oggiに選ばれている。主な詩集に、Il Cielo (1981), L’io singolare proprio mio (1992), Sempre aperto teatro (1999), La guardiana (2005), Pigre divinità e pigra sorte (2006), La patria (2011), Vita meravigliosa (2020)がある。唯一の散文作品Con passi giapponesi (2019) はカンピエッロ賞を受賞した。さらに、モリエールやシェイクスピアの作品を翻訳した。
2012年にはシンガーソングライター、ディアーナ・テヘラとともに書籍とCDからなる作品集Al cuore fa bene far le scaleを制作した。

パトリツィア・カヴァッリ詩選集

パトリツィア・カヴァッリ

Poesie 1974-1992 (Einaudi, 1992)より

誰かが私に言った
あなたの詩が
世界を変えることはないでしょう
私は答える たしかにね
私の詩が
世界を変えることはないでしょう (5頁)


もし私の家のドアを叩いて
それから眼鏡を外して
私も同じ眼鏡を外して
それから私の口に入って
キスが平等かなんて考えず
「ねえアモーレ 
なにがあった?」と言ったとしたらそれは
素晴らしい演劇の一幕だろう (142頁)


あなたは行ってしまう 離れながら
私に言う 「ごめんね」
私を少し慰めようと思ってるんでしょう
いつも悲しい思いをさせる
ひとりのときも 他の人と一緒のときも
また言う 「ねえアモーレ 寂しくなるね
これから何をするの?」
私は答える 「あなたをいつも思うわ
あなたの無をたくさん考えるの」 (148頁)


Sempre aperto teatro (Einaudi, 1999)より

静かに座っている彼女たちへ
退屈して 手をポケットに入れて
家の鍵をじゃらじゃら触って
いくつかボタンを外してみたり
男物のシャツのボタン 背筋はまっすぐ
4分の3顔を見せ 聞いているようで
聞いていない 彼女たちを守るのは
勉強机の背もたれにある肘掛けの城壁
傷はなく安全で 教師用 懲罰用のよう
そしてブラックリストを配っている
家のなかに作り上げた国の おこりっぽいちっぽけな独裁者
母になってそれから
母であることを自慢する 執拗で建設的で
カレンダーには予定がぎっしりで
いつもなにかの理由で集まる準備はできている
ミモザかバラか 仲間になった大勢は
決して一人きり ばらばらになることはなく 毎年
プログラムは日替わりメニューみたいに
感情のプログラム 必然か それとも求められたものか
昨日はラ・フォルツァで今日はグラッツィエ・マンマ
ただ芸術にも従っているが
内心そこに参加したいとも思っている
そこにないものと勘違いしながら
ひとまず待っている間に熱中するのは
ありふれた的外れの幻想
カプリを夢見て フラスカーティにたどり着く
ポケットには帰りの切符
彼女たちに対し 私は終わりなき戦争を誓った
それから わからない 気が散ってしまった (29頁)


人にはそれぞれ秘密がある
私のは頭痛だ
どうして愛がいつも私を呼び覚ますの?
こっちにきて ねえアモーレ はやく 頭がいたいの
頭痛が記憶をぼやけさせる
でももし 頭が記憶を失ったとしても
記憶をかき集める心がある
けど心には時間も歴史もないから
昔の痛みが今の喜びになる (68頁)



Pigra divinità e pigra sorte (Einaudi, 2006)より

すべてはこんなにも単純で そう こんなに単純だった
当たり前すぎてほとんど信じられないほど
これには身体がいる 私に触れるか 触れないか
私を抱きしめるか 離れていくか 残りは狂った人たちに (133頁)



Datura (Einaudi, 2013)より

この完璧な夜 この甘美な時間
沈黙 邪魔する者はない
海と空とだけ触れるこの家で
身体のちょうどいい温度で
肉のない私はここであなたの目の前で
私は退屈し あなたも退屈して考える
沈黙を破れば退屈も破られるのではないか
実際にはすべての言葉は退屈を加速させる じゃあ今は?
孤独な退屈はたぶん贅沢だけれど
二人での退屈は絶望で
退屈はおとなしく佇んでいるわけではなく
活発に私の血のなかで働き
私を弱め そして消し去る (33頁)


韻を踏む愛
前よりちょっとまし
韻を踏む愛に
すごく痛いものはない (74頁)



Vita Meravigliosa (Einaudi, 2020)より

階段を登っていた 激しい憂鬱とともに
残酷なほどに 私は扉の外で彼女を待ったけれど
彼女は登るのに夢中
死へ向かうサイみたいに
頂上に着いて私を見る
突然 的になる私 だから闘牛士みたいに慎重に
素早く動くと 彼女は角を向ける
まっすぐに入り口の隙間から私のベッドへと (7頁)


どうすればいいんだろう
私に敵対する精神を
追い払うために
永久の敵対
私であることの幸せな罪
私の幸せな無に対して (21頁)

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