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カヴァフィに触発された現代ギリシャの詩人たちによる6編の詩

ΕΞΙ ΠΟΙΗΜΑΤΑ ΣΥΓΧΡΟΝΩΝ ΕΛΛΗΝΩΝ ΠΟΙΗΤΩΝ ΕΜΠΝΕΥΣΜΕΝΑ ΑΠΟ ΤΟΝ Κ. Π. ΚΑΒΑΦΗ

イリニ・マルガリティ、ニコス・フィルディシス、マニア・メジティス、ステリオス・フルムジアディス、レナ・カレルギ、ハリス・ヨシフ

Ειρήνη Μαργαρίτη, Νίκος Φιλντίσης, Μάνια Μεζίτη, Στέλιος Χουρμουζιάδης, Λένα Καλλέργη, Χάρης Ιωσήφ

イリニ・マルガリティ   1979年生まれ。演劇を学び、女優、監督、脚本家として活躍。処女作 『Flamingo』(Melani社、2014年)は、ギリシャ作家協会のヤニス・ヴェルヴェリス最優秀新人詩人賞を受賞。また、詩集『flou』(Saixpirikon社、2019年)は2020年、Anagnotis賞詩部門にノミネートされた。その後『Cloudchase』(Melani社、2023年)を出版。彼女の詩は英語、スペイン語、スウェーデン語、セルビア語に翻訳され、多くの詩選集に掲載されている。

ニコス・フィルディシス 1987年7月アテネ生まれ。学生時代をぺロポネソス半島ガルガリアニで過ごす。クレタ大学で生物学を、キングスカレッジロンドンで免疫学を学ぶ。2012年に詩集『The Screen』を出版。新進詩人に贈られるヤニス・ヴァルヴェリス賞にノミネートされた。2016年、2冊目の作品集『Mercury』を出版。以来アテネに住み民間企業で働く。詩や書評は印刷物やオンラインジャーナルに掲載され、最新の詩集はミハリス・カロゲラキスの音楽に詩をつけた 『All the stray cats of my dream 』で、2021年にMicri Arktos社から出版された。文芸誌『Mouson』の編集チームのメンバーでもある。

マニア・メジティス 1965年アテネ生まれ。西アッティカ大学で看護学を、イギリスのオープン大学で文学を学ぶ。 欧州文理翻訳センターの2年間コースで英語からギリシャ語への翻訳を学ぶ。2007年から2010年までエリニカ・グラマタ出版で英文学の専門読者として働く。書籍の翻訳のほか、印刷物やオンライン雑誌、新聞のための詩や記事の翻訳も手掛ける。2019年には二カ国語(ギリシャ語-英語)で詩集『Awakened in a country, Greek poetry in the present tense』(ローザ・ルクセンブルク財団発行)を編集。また現代ギリシャの詩を集めたウェブサイト、オンライン・アンソロジー(https://poets.gr/el/ )の編集にも携わっている。これまでに執筆した詩集は次の通り:『 The Black Between』(Kima 社、2018年)、『Mouth』(Kukkida社、2021年)、『Before the Artifisial』(Sozozpolis図書館のモノタイプ Koukkida社、2023年)、『My Dear Father』(Kukkida社、2024年)。

ステリオス・フルムジアディス   1973年アテネ生まれ。アテネとリヨンで法律を、テサロニキでイタリア文学を学ぶ。翻訳史が専門の翻訳学博士(ルーヴェン・カトリック大学)。またアテネのギリシャ音楽院でクラシックピアノと音楽を学ぶ。外交官としてこれまでにベルリン、ブリュッセル、サンパウロ、2022年からは東京にて勤務。散文と詩を書き、文学作品のギリシャ語翻訳も多く手掛ける。また翻訳研究に関する学術論文も発表している。2017年6月に『Berlin-Brussels』と題した第1詩集と、2024年10月に『The State of Bodies』と題した第2詩集をPerispomeni社より出版。7カ国語を話し書くことができる。現在駐日ギリシャ大使館次席。

レナ・カレルギ    詩集『Untamed』(Ikaros社、2023年、雑誌『Anagnostis』の詩賞受賞)、『One ship too many』(Gavriilidis社、2016年、第2版Monocle社、2023年、詩人サークル賞受賞)、『Gardens in the sand』(Gavriilidis社、2010年、マリア・ポリドゥリ賞受賞)を出版している。共同制作の実験的詩集『Group of Poetry』(Gavriilides社、2010年)、『Group of Poetry II: Beyond Dreaming』(Gavriilides社、2012年)に参加。詩、短編小説、翻訳、エッセイは、ギリシャをはじめとする各国の雑誌や詩選集に掲載されている。訳書にジャコモ・レオパルディの詩(The Night Remains, Gavrielidis社、2013年)や、サミュエル・テイラー・コールリッジ、ウィリアム・ワーズワース、ジョン・キーツ(Kedros社、2021年)の詩などがある。

ハリス・ヨシフ     1972年パリ生まれ。テサロニキ・アリストテレス大学、マンチェスター大学、シカゴ大学、オックスフォード大学で学ぶ。これまでに6冊の詩集を出版。『Of the Strophades Monastery : A transcription』(Perispomeni社、2020年)のモノローグで、2022年アテネ・アカデミーのアタナ賞を受賞。ドイツ語で書かれた『Shock-headed Peter』を翻訳し2022年12月に出版(Perispomeni社)されたほか、彼の詩、記事、評論は日刊紙や主要な文芸誌に掲載されている

カヴァフィに触発された現代ギリシャの詩人たちによる6編の詩

Hedy Lamarr / イリニ・マルガリティ

この世に
よりよきものを与えなさい
美を
恐れてはいけません

言っておきますが
あなたはもう身を隠す必要はないのです

ウィーンの音楽を
お聞きなさい
また、新たに
オペラに行けばいいのです

に立って思いを巡らすのに
秋は最良の季節です

とりわけ、父への視線で
忘我することのないようになさい。

あなたには子供が、 Ecstacyが
船があることを忘れないでください。


あなたが家に
閉じこもっている時。
ピアノに収まっているアイデアが
やって来きます

ただそれだけのこと

音楽を奏でなさい
あなたの歯を
この世界で
裂きなさい。

カエサリオンのように / ニコス・フィルディシス

あなたが来て
詩節に輝くのを目にする時
私は軽くシャツを開こう
-ちょうど最初のボタンを-
再び
十字架のように
私の胸元にあなたが落ちること以上を
シャツは望んでいないのだから

名声と美 / マニア・メジティス

神話の広間に
さらに身を屈め
今日ではさらに身を屈め
パラマスは話している。

大理石のように巨大な
重々しい言葉で
高邁な英雄たちのために
高く立つ民族

カヴァフィスは片隅で静かに
敗北を
忘れ去られた王たちを
幻想の街をささやいている。

輝かしい過去を賞賛する者がいれば
些細な端々に拘泥する者もいて
彼の戦いはひっそりと栄光の
視線の中に失われていく。

夜の沈黙で 永遠の影で
同じ記憶を彫りながら
時の道に出会う。

他の唇 / ステリオス・フルムジアディス

飢餓と怠惰と共に
君の門の外にいたのは
昨日のことだった。
僕が本当に望んだことではなかったから……

嘘だ。
おそらく、僕は君を欲していなかった、
でも欲していた。
僕が口を満たしてあげよう。
僕が唇を満たしてあげるか。
僕がまた触れよう。
見知らぬ唇だったなら。

僕たちの接吻から
この突然の
記憶の欲求に
参与していたのは
僕の唇だけだった。

美しかった
他のものだったなら。
美しくて柔らかい、大きなものだった。
唇は、肉付きがよかった。
単に僕が試みに言ったことだけど。

ほら、美しかったんだ、
唇は思いがけず、初めて欲望するような
それだということを、私に思い出させたのだから。

証拠 / レナ・カレルギ

アクロポリスの新しい博物館
二階、円柱の後ろ
あなたはかろうじて
太陽を崇拝していた太古の魔女たちが
彫った秘密の跡のついた
魔法の大理石の円球に注意を向ける。

瑠璃や黄色のついた神殿と
秘儀の、秘密の儀式と合わせて
教科書の中に、この円柱を見つけ出してみたかった。

この国は何世紀も
忠実だった。白い大理石と
論理
そして真理を有するという
イメージに。

「エロティック」 / ハリス・ヨシフ

私が聞き感じた全てのものから
私の、私に恋した情熱的な若者の
記憶が絶えず甘酸っぱく小躍りし

私の肉体の全てを、接吻をもって吸い、 喜びを欠いた熱情の関興が私たちを
グロテスクな狂者の恋が私たちを取り巻いていた。

私に月桂樹と花で王冠を
私に塗って撒き散らし、滴らせた
二十歳の若者の血が
注ぐ前のあらゆる色の留帯で王冠を被せていた。

これが、私が石の魂の形としてあったもの
プラクシテレスの善良なる幸運の像
私の運命は、恋、死、崩落

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