ヨーロッパへの窓

★★★★★★

Windows to Europe

オランダオランダ

三編の詩

Drie gedichten

ピム・ラマース

Pim Lammers

ピム・ラマースは1993年生まれ。オランダ北部フリースランド州の田舎で育つ。子供の頃に物語を書き始め、十代で書いた短編小説がオランダのWrite Now! Amsterdam賞を受賞。2017年、「ぼく、ひつじじゃなくてぶたなんだ」でデビューし、翌年には銀の石筆賞を史上最年少で受賞した。2020年、「ぼく、ひつじじゃなくてぶたなんだ」の続編である絵本 De boer en de dierenarts (ミルヤ・プラーファン絵)がミュンヘン国際児童図書館のホワイト・レイブンズに選出される。文芸誌に作品を発表したり、舞台で朗読活動を行ったりしている。
https://pimlammers.nl/

Born in 1993, Pim Lammers grew up on the Frisian countryside and has been writing ever since he was a child. In his teens he wrote his first ‘real’ story and won the WriteNow! Contest in Amsterdam.
In the meantime Pim has been writing for both adults and children. In 2017 his debut ‘The Lam That Was a Piglet’ (Het lammetje dat een varkentje is) came out. It’s the first Dutch transgender-picture book with illustrations by Milja Praagman. In 2018 Pim received a Silver Slate for this book which made him the youngest Slate-winner in the history of this award. In 2020, the sequel to ‘The Lam That Was a Piglet’ titled ‘The Farmer and the Vet’ received the White Raven Award by the International Youth Library in Munich. For adults Pim has been writing several stories which he publishes in literary magazines and which he recites on literary evenings.

ピム・ラマース
長山さき 訳

三編の詩
家族は自分で選べない
ミックとぼくは最初は近所の子どもどうしで、
それから友だちになり、そのあと親友になって
いまではきょうだいになった。

ママは、それはむりだと言う。
「家族は自分で選べないのよ」と。

でもママはなんでも決めつけるから。
紅茶を飲むとき、クッキーは一枚で十分、
子どもは七時に寝るのがいい、
犬はぜんぶいつでも臭い、などと。

だから、ミックとぼくは計画したんだ。
明日の朝早く、ぼくたちはいなくなる。
知らない村か、知らない国をめざして。
家族には二度と連絡しない。

もしかしたら、家族のみんなが新聞広告を見つけるかもしれない。
「きょうだい二人が両親を探しています。
 見習い期間は一年。犬は大歓迎。
 子どもがいてもだいじょうぶです。」

男の子がしちゃいけないこと
ニックとぼくは男の子。
男の子がしちゃいけないことはたくさんある。
‐ 夜中の三時まで起きて、こわいゾンビの映画を見ること
‐ 学校が休みじゃないときに泊まり合いっこすること
‐ 手放しで自転車に乗ること
‐ むずかしすぎる書き取りの時間にカンニングすること
‐ むずかしすぎる書き取りの時間に見せてあげること
‐ 小屋に糸のこぎりとハンマードリルをもっていくこと
‐ ○○○という汚い言葉を使うこと
‐ パパに言わず、梯子も使わずに屋根の上のボールを取ること
‐ 二口目のビールを飲むこと
‐ 先生が計算問題を説明しているとき、クマとライオンのどちらが強いか話すこと
‐ だめだとわかっているのに「ライオンにきまってるよ」と言ってしまうこと
‐ 教室でとなりどうしに座ること
‐ ママがヨガのポーズをしているときに、晩ごはんはなにか、聞くこと

ぼくたちは男の子。
男の子がしちゃいけないことが多すぎる。

だからぼくはこっそり
だれも見ていないときに、
ニックにそっと
キスをする。

守る
ぼくのかわいい
とっても小さな
弟。

ぼくは弟を腕に抱いて、
発泡スチロールのズボンをはかせ、
プチプチのセーターを着せてあげたい。

小さな自転車のヘルメットをかぶせたい。
小さな浮き輪、小さな肘パッド、
小さな膝パッド、小さな手首ガードをつけてあげたい。

弟のベッドのまわりに砦をつくりたい。
三匹、四匹……五匹の番犬をあげたい。
見張りをするガチョウの群れも。

ぼくは弟を守りたい。

でも……
弟の泣き声がうるさすぎるから、
まずは自分の耳を守らなきゃ。