日本語・英語同時通訳
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金・祝
16:40 - 18:10
駐日欧州連合代表部
シューマン講堂
新進気鋭の欧州現代作家に贈られる「EU文学賞」は、2008年の創設以来、数々の才能を発掘してきました。欧州書店連盟(EBF)、欧州作家協議会(EWC)、欧州出版社連盟(FEP)が厳選した審査員により選び抜かれた作品は、国境を越えて多くの読者に親しまれています。ブッカー賞を受賞したドナル・ライアン(『軋む心』、2012、白水社)や、第63回ベルリン国際映画祭・金熊賞受賞作品『私の、息子』(2013)の脚本を担当したラズヴァン・ラドゥレスク(『セオドシアス・ザ・スモール』(2006))など、過去の受賞者は今や世界を股にかけて活躍しています。EU加盟国および近隣諸国を含む欧州37カ国を対象とし、欧州の文化や言語の豊かさを象徴する同文学賞の創設10周年を記念して、4名の受賞者に自身の作品の魅力について伺います。後半は、2012年に同賞を受賞しているケヴィン・バリーも交えてディスカッションを行います。聞き手は芥川賞作家の小野正嗣。
アダム・フォウルズ Adam FOULDS(英国出身。2011年受賞)
リディヤ・ディムコフスカLidija DIMKOVSKA(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国出身。2013年受賞)
ヤスミン・B・フレリヒ Jasmin B. FRELIH(スロヴェニア出身。2016年受賞)
ワリド・ナブハンWalid NABHAN(マルタ出身。2017年受賞)
ケヴィン・バリーKevin BARRY(アイルランド出身。2012年受賞)
聞き手/司会:小野正嗣 Masatsugu ONO(小説家。立教大学教授)
アダム・フォウルズ Adam FOULDS
1974年生まれ。ロンドンのバンクロフト学校に学び、オックスフォード大学セント・キャサリンズ・カレッジで英文学を専攻。2001年にイースト・アングリア大学でクリエイティブライティングの修士号を取得。南ロンドン在住。
デビュー作の『The Truth About These Strange Times』(2007年)は、2008年のサンデー・タイムズ若手作家年間最優秀賞およびベティ・トラスク賞を受賞。続いて、ケニヤで1950年代に起こったマウマウの反乱を題材にした長編物語詩『The Broken Word』(2008年)を発表。この作品は、2008年のジョン・ルーウェリン・リース記念賞と2009年のサンデー・タイムズ若手作家年間最優秀賞の最終候補となり、サマセット・モーム賞と、2008年のコスタ賞(詩部門)を受賞した。『The Quickening Maze』(2009年)は二作目の長編小説。イギリス最高の「peasant poet(農民詩人)」とも評されるジョン・クレアが、1830~40年代、マシュー・アレンの運営する精神病院に入院していた史実を下敷きにした小説。強烈な自然愛と人間愛を持ち、失恋経験が精神に異常をきたしたといわれるクレアの魂に寄り添い、力強く描いた作品で、2009年のマン・ブッカー賞の最終候補作となった。2010年に王立文学協会会員に選出。
リディヤ・ディムコフスカ Lidija Dimkovska
1971年、マケドニアのスコピエ生まれ。詩人、小説家、随筆家、翻訳家。現在詩集6冊と小説3冊を出版しており、20言語以上に翻訳されている。
スコピエ大学で比較文学を学び、ルーマニアのブカレスト大学にてルーマニア文学博士号を取得。ブカレスト大学外国語外国文学学部でマケドニア語・文学の講師を、スロヴェニアのノヴァ・ゴリツァ大学にて世界文学の講師を務める。2001年からスロヴェニアの首都リュブリャナで暮らし、フリーランスのライター、ルーマニア文学やスロヴェニア文学のマケドニア語翻訳家として活動。多くの国際文芸フェスティバルに参加し、ライター・イン・レジデンス(大学が作家に住居を提供し、講義を行ってもらうと共に創作活動を支援するシステム)として、米アイオワ州、ベルリン、スプリット(ルーマニア)、グラーツ、ウィーン、ザルツブルグ(以上オーストリア)、ティラナ(アルバニア)、ロンドンでも活動。詩人としてもフーベルト・ブルダ東欧若手詩人文学賞(2009年)、トゥドール・アルゲージ国際詩賞(2012年、ルーマニア)等受賞歴多数。ヴィレニツァ国際文学賞(スロヴェニア)の審査員を務める。
2004年に出版された処女作『Skriena Kamera (Hidden Camera) 』と2012年の『A Spare Life』は共に、マケドニア作家協会散文作品大賞を受賞し、ウトリンスキ・ヴエスニク紙小説大賞の最終候補作となっている。前者はスロヴェニア語、スロヴァキア語、ポーランド語、ブルガリア語など8カ国語に翻訳されている。後者は2013年にEU文学賞を受賞、アメリカの2017年最優秀翻訳作品賞の候補に残った。2016年には自身の三作目の小説となる『Non-Our』を出版し、同作は年間最優秀小説としてマケドニア作家組合賞およびバルカニカ国際文学賞の最終候補に挙がった。
ヤスミン・B・フレリヒ Jasmin B. FRELIH
1986年、スロヴェニアのクラーニ生まれ。リュブリャナ大学教養学部で比較文学と文学理論および文学史を学ぶ。
2013年に出版された処女作『Na/pol (In/Half)』は、メディアの注目と批評家からの称賛を集めた。同作は毎年恒例のスロヴェニア・ブックフェアで最優秀文学デビュー賞を受賞、年間最優秀小説賞および年間最優秀作品賞の最終候補となり、ハンガリーのブダペストで開かれた2014年の欧州デビュー小説フェスティバルでスロヴェニア代表として紹介される。2015年には短編集『Ideoluzije (Tiny Ideologies)』を出版。文芸批評誌『I.D.I.O.T』でフィクション編集者として5年勤務するあいだに、スロヴェニア文学の新世代を代表する作家やや詩人と共に仕事した。また、短編やエッセイ、アメリカ文学からの翻訳を『Sodobnost』『Literatura』『Dialogi』といったスロヴェニアの一流文芸誌に発表しており、スロヴェニア語の詩のフレリヒによる英訳は『Banipal』『Versopolis』『I.D.I.O.T』誌の多国籍アンソロジーに掲載されている。
ワリド・ナブハン Walid NABHAN
1966年、ヨルダンのアンマン生まれ。家族はもともとパレスチナのヘブロン郊外の小さな村に住んでいたが、イスラエル建国と最初のパレスチナ人離散をもたらした1948年の戦争の後、ヨルダンへの避難民となる。
国連が運営するアンマンの学校を経て1990年にマルタに渡り、検査技術を学ぶ。1998年、英ブリストル大学生物医療科学科を卒業。2003年、マルタ大学にて人権・民主化を専攻し修士号を得る。著作に、マルタ語による短編集2冊(『Lura d-Dar u Ġrajjiet Oħra li ma Ġrawx』2009年、『Leħen tal-Fuħħar u Stejjer Oħra』2011年)と小説1冊 (『L-Eżodu taċ-Ċikonji』 2013年、同作で2014年国民文学賞を受賞)。2014年には初の詩集 『Fi Triqti Lejh』を出版。新聞・雑誌上で詩や記事を発表しており、現代文学作品のマルタ語からアラビア語への翻訳も手がける。
ケヴィン・バリー Kevin BARRY
ケヴィン・バリーは小説『City of Bohane』『Beatlebone』、短編集『There Are Little Kingdoms』『Dark Lies the Island』の著者。2007年にルーニー賞、2012年にはサンデー・タイムズ紙EFG短編作品賞を受賞。
『City of Bohane』はコスタ最優秀小説賞やアイリッシュ・ブック・アワードにおいて最終選考まで残ったほか、オーサーズクラブの最優秀賞や、ヨーロッパ文学賞、国際IMPACダブリン文学賞を受賞。この作品は未来のアイルランド西部が舞台のスリラー小説であり、映画やコミック、ポップカルチャーから大きな影響を受けている。
ケヴィン・バリーの作品はフラン・オブライエンの作品と同様に、鮮やかで真に迫ったタッチと暗くユーモラスなスタイルで展開されている。スコットランドの作家アーヴィン・ウェルシュからは「アイルランド出身作家の中で、ここ数年で最も印象的かつ独創的」との評価を受けた。また、『Beatlebone』はゴールドスミス賞を受賞し、アイリッシュ・ブック・アワードの最終選考にも残っている。
小野正嗣 Masatsugu ONO
1970年、大分県生まれ。作家、立教大学文学部文芸・思想専修教授。01年「水に埋もれる墓」で第12回朝日新人文学賞受賞。02年「にぎやかな湾に背負われた船」で第15回三島由紀夫賞受賞。2013年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。15年「九年前の祈り」で第152回芥川賞受賞。主な著書に、『にぎやかな湾に背負われた船』(朝日文庫)『マイクロバス』(新潮社)、『浦からマグノリアの庭へ』(白水社)、『夜よりも大きい』(リトルモア)、『九年前の祈り』(講談社文庫)『残された者たち』(集英社文庫)、『水死人の帰還』(文藝春秋)、『獅子渡り鼻』(講談社文庫)、『ヨロコビ・ムカエル?』(白水社)など。訳書に、V.S.ナイポール『ミゲル・ストリート』(小沢自然との共訳、岩波書店)、マリー・ンディアイ『ロジー・カルプ』(早川書房)、アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』(新潮社)など。
駐日欧州連合代表部
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